肩をたたくのは…? 解決

件のお寺に行くスケジュールは、主に彼の方にいろいろ邪魔?がはいって、なかなか実現しませんでした。

「ねえ、君のとこ、変なことないよね?
僕んとこ、まだ変な気配がするんだよね…。
本を読んでると、人が後ろからのぞき込んだみたいに暗くなるのよ…。」

ある日、彼からそんな電話を受けた私は、グダグダ迷う彼を説き伏せて、その週の日曜日にお寺へいくことを決定しました。
これ以上引き延ばしたら本当に良くない影響がでそうだったからです。


約束の日、彼はやっぱり気乗りがしないようでした。
お寺の後、お気に入りの公園に連れて行ってくれる約束だったのですが、そこへの直行バスに乗ろうとか、小腹が減ったとか、無理に用事を思いついているようです。

ちょっと不思議なのですが、絶対そのお寺に行くべきだ、という気がずっとしていました。
彼の話を聞いていると、なんだか純粋なお寺とはちょっと違うような印象がしていたし、正直、あんまり行きたくない場所に感じました。
それでも、絶対行った方がいい、行くことで解決する、という気がしてならなかったのです。

後日調べたところ、東の高野山といわれる名刹で、不思議な井戸があり、霊験のある閻魔様を祀っているところでした。
ネットの紹介はいいところ、という意見が多かったのですが…。

落ち着きをなくした上に渋る彼を引きずるようにしてお寺へ向かいます。
彼のお祖母さんが入院している私立病院の、本当にすぐ側(もちろん、病院が後にできたのですが)にありました。

元々参道だったらしい、細い道路を入っていくと、なんだか雰囲気がおかしい…。
明らかに、この住宅地、元々お寺の敷地…か、参道だったはずです。
いまはもう住宅地なのに、鬱蒼とした林に囲まれた細い参道が見えたような気がしました。

進むにつれて、彼の様子もおかしくなっていきます。
お寺の敷地に入り、潜り戸に似た門を抜けた瞬間に、本当に様子が変わりました。
つかんだ腕の体温があり得ないほど下がっています。
大丈夫、と聞くと、なぜか声を出したくないようで、身振りでそれを伝えてきました。

彼は何かを探すようにキョロキョロしながら、初めて来たとは思えない勢いで進んでいきます。
本堂を通り過ぎて、奥の院といわれるあたりまで一気に進みました。
通路に古い納骨の塔があったりして、イヤな雰囲気です。
もうこの先は檀家のお墓しかない、と言うところでビクっと立ち止まり、しばらくキョロキョロしてから逆に進み始めました。
そしてやっぱりズンズン進んでいきます。
今度は閻魔様の眷属?みたいな像が並んでいるところを通り過ぎ、そのまま本堂の前へ戻ります。

ちょうど、本堂の脇の事務所から、喪服を着た数人がぱらぱら出てくるところでした。
お葬式ではなく、何かの区切りのようです。

彼の様子が一段とおかしくなりました。
ビクっと立ち止まって、うろうろし始めます。

「どうしよう、声かけた方がいいのかなあ、でも…どうしよう…。」

うわごとみたいにつぶやき続けます。
どうしたの、なにがあったの、と聞くと、「全部終わったと思う。けど…。」と煮え切らない答えが返ってきました。

「やっぱりまだ側にいたの。
名前も全部わかった。あの人達が家族なの。今日は納骨にきてて…。
僕の役目はもう終わったんだけど、どうしよう、声かけたほうがいいのかな、どうしよう…」

終わったんなら用はありません。
そこの人たちが家族として、「お宅の××さん、僕の側にずっといたんです」っていう話をされてうれしいかどうか微妙だし。
彼女がこう思っていた、っていうことを伝えることは多少意味があるかもしれませんが、それはもっと時間が経ってからでいいはずです。
今、無駄に困惑させることもないでしょう。

迷う彼を引きずるようにして門をでました。
でたとたん、彼は腰が抜けたようになりました。
そして、ポロポロ涙ぐんでいます。
ちゃんと歩けますが、「こわかった、もうこんな体験したくない。」と言い続けて、フラフラしています。
でも、お寺から遠ざかるにつれて、すごく晴れやかな顔になってきました。

とりあえず近所のファミレスに引っ張っていって、甘い物をかじって飲み物を飲んだところでやっと落ち着いたようです。
自分がどういう状態だったのか、ぽつぽつ話してくれました。

「まだ順序立てて話せないんだけど…。
まずね、死んでなかった。最初生きてたの。
あと、やっぱり恨まれてたわけじゃなかったよ。
僕がなにか大事な物を預かってて、返すためにあそこにいったの。
それは、もうちゃんと終わったの。
あと、彼女、なんか別れたい、っていうか、あのお寺がイヤみたいな感じで…。
あそこにいた人たちは彼女の家族で、名前もハッキリわかった。
僕が音を聞いたのは、あそこのホールで彼女のお葬式があった時らしいの。

門をはいるちょっと前からハッキリ声が聞こえててね、こっち、あっちっていうの。
声を出せなかったのは、出すと別な人の声がでそうで怖かったから。
たぶん、あの家族に会うために引っ張り回されたんだと思う。
今日のこの時間じゃないとダメだったの。
だから、今日来るのはしらないうちに調整されてたんだよ!スゲーこわい!」

体温ものすごい下がってたよ、というと、納得したようです。
ちなみに、一緒にいた私には、最後まで『彼女』の気配は何にも感じられませんでした。

「それでね、門を出るときに、さようなら、ありがとう、ってハッキリいわれた。
それで、何でもないのにすごく悲しくなって…。
僕から離れるのが悲しいとかじゃなくって、なんでか分からないけど、悲しいっていうのに影響されて泣いちゃった。
もう終わったと思うんだけど、すごい怖かったし疲れた…。」

彼は、最後までご家族に声をかけた方がいいか迷っていましたが、門を出るときに車を回していたのがみえたので、今行っても間に合わないでしょう。
『本人』が納得したのなら、これ以上関わらない方がいいでしょうし。
必要なら、氏名が分かってるんだから、お寺に問い合わせればいいことです。
私はあんまり行きたくありませんが。

こうして、約1ヶ月半にわたる異変は終息しました。
部屋に戻った彼からは「空気がぜんぜんちがうよ!」と、うれしそうに報告があったし、もう大丈夫と思います。

私は全然感じなかったからいいんですけど、心配だし、本気で弱ってるし、こんなことは二度と無いように願っています。

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と、いう所までが一年前の出来事です。
書いてすぐ公開しようとしましたが、イヤな雰囲気が立ち込めたので、一周忌が終わるまで、ということで封印してありました。

実は、彼はその後、お寺に行って、こんなことがあったんです、という話をしてきたそうです。
信じてもらえるかどうか分からなくて、それでも心にしまっておけなくて行ってきたんだそうですが、お寺さんのほうでは真剣に話を聞いてくれたそうです。
ちゃんと該当者もいたそうですしね…。
まあ、お寺さんはそんな話を聞くのも仕事のうちですから。

そんなわけなので、いつか、彼女のご家族の元へ、彼の話が伝わるかもしれません。
それはたぶん今年ではなくて、もっと時間がたってから、だと思いますが。

1年たったことでもあり、改めてこのエントリをアップします。
冒頭とかぶりますが、再度、彼女のご冥福を祈るとともに、ご家族の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

もう来ないでね!(←あ、ぶっちゃけちゃった)

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このページは、電氣猫が2008年6月17日 10:16に書いたブログ記事です。

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