ツガルさんと呼ばれたフタコブラクダの話

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日本の動物園に、世界最高齢といわれたラクダが存在していたのをご存知でしょうか。

野毛山動物園にいたメスのフタコブラクダ「ツガルさん」です。2014年に推定38歳、人間に換算すると約120歳で永眠しました。

実はこのツガルさん、私の地元から野毛山へ行ったラクダなのです。

当時の事を覚えている人間はほとんど居ないと思うので、書き起こして置くことにしました。

2012年頃のツガルさん

「ツガルさん」は、どういうラクダだったのか

ツガルさん永眠前後は、こちらの記事が詳しいです。

横浜総局へ赴任したばかりの一昨年12月、当時のデスクに「君の最優先事項だ」と言われて緊張しながら資料を受け取ったのが最初だった。そこに記されていたのは、横浜市立…

人懐こさとサービス精神から「営業部長」を拝命し、野毛山動物園を訪れる人達に愛され、晩年、体が動きにくくなっても「取材があるよ」の声でシャッキリ頭をあげていたツガルさん。最高なのは年齢だけではありませんでした。

出自についてはこちらの取材でもサラっと書かれていますね。

青森から来たラクダなので、青森=津軽、ツガルさん、という名付けになったようです。

地域情報サイト『はまれぽ.com』が、〝野毛山動物園のツガルさんが亡くなられたそうです。どういった経緯で野毛山に来たのか等、調査してください。〟を調査しました。 | 『はまれぽ.com』とは...横浜、川崎、湘南、神奈川県のキニナルお店、噂、スポット、変な場所、不思議なモノ、行政問題など真面目な疑問を徹底調査してレポー...

ところがですね。

ツガルさん、津軽生まれではないんです(笑)

先の記事にサラッと書かれていた「観光牧場」の住所は「青森県上北郡野辺地町」。なんと「南部(旧南部藩)」なのです。境目ですけど。

青森県が藩政時代の名残で「津軽・南部・下北」に分かれていて、方言も風俗も違うことは、他県の人にはあまり一般的ではありません。動物園の方々が「青森=津軽」と思い込んだのもしょうがありません。

あと、ナンブさんだと語感が微妙ですよね。名前としては「ツガル」でよかったな、と思います。

観光牧場時代のツガルさん

さて、その野辺地町にあった「観光牧場」は、高度成長期の時代、個人経営のオートレース場の付属物として開業しました。

参考:陸奥湾インターナショナル・スピードウェイ(野辺地スピードウェイ)

地図にむつ湾スピードウェイ跡と記されていたので向かってみました。 ちなみにグーグルマップでは「Shipwreck beach」と記されます。その名の通り、かつて放置座礁船(廃船)がありました。 かつての状況がわからないので…私にとったらただ...

ラクダの他に、タイワンザルやライオンもいました。そう、wikiに載っているラクダがツガルさんの両親なのです。

動物園は昭和50年ごろまで開業していたそうで、私は実際に行ったことがあります。そこにラクダが居たかは思い出せませんが、結構本格的だったような記憶があります。

フタコブラクダは夫婦で飼われていて、ツガルさんはその夫婦から生まれたラクダなのだそうです。

実はフタコブラクダ、ヒトコブラクダより少ないんです。2010年では家畜化されたラクダの90%がヒトコブラクダ、との情報があります(wikipediaより)。

何もかもが緩かった昭和中期とはいえ、よくもまあ個人でフタコブラクダのつがいを入手できたものだなあ…と思います。

やがて観光牧場が倒産すると、ライオンやラクダの夫婦は債権として売られていき、跡地にはタイワンザルとツガルさんが残されました。

野毛山動物園で開催されていた「ツガルさんの家」では、“近隣の牧場に夫婦ごと引き取られ、そこで生まれた”という説明がありましたが、それがちょっと謎なんですよね。

ツガルさんが餌を貰っていたのは確かだと思います。でなければ雪深いあの地で、冬を越すことはできなかったでしょう。

ただ、私には「牧場に居た」という記憶が無いんですよね。

ツガルさんが野毛山動物園に引き取られるきっかけになったのは、テレビ番組で「国道のラクダ」として紹介されたからです。

国道279号線、通称「はまなすライン」に野良ラクダが居る、というので有名になったのです。ラクダの他に、タイワンザルも野生化して問題になりました。

※タイワンザルについては「冬を越せないだろう」という予想が外れた結果で、北限のニホンザルとの混血を防ぐために、後に大変な苦労で全頭捕獲し、施設に譲渡されたと聞きました。

私の場合、たまたま車で通りかかり、そこにありえない生き物を見つけて驚いたのがきっかけです。いやだって、青森の海岸にラクダが居るって普通は思わないですし。

あまりに驚いたので、自転車で実際に現地に出かけ、そこに本当にラクダがいて、撫でることもできたし、そのへんのワラビやススキをちぎって与えたら食べてくれた、というのが驚きでした。

廃墟となった観光牧場のフェンスの向こう、大きなラクダが優しげな瞳で近寄ってくるのです。あまりにも人懐こくて嬉しかったので、何度か通いました。

雪の中に立っているのも見かけました。

フタコブラクダは最大で3メートル近くにもなる、巨大生物です。はまなすラインは重要な生活道路でもあるので、目立ちます。いつのまにか「国道のラクダ」という二つ名もつき、新聞記事になりました。

そこからテレビの取材が入り、紹介番組が流れ、それを見た神奈川県横浜市の篤志家がお金を出して野毛山動物園へ移ることになったのです。

観光牧場に居るうちに生まれたのか、倒産後にラクダ夫婦が引き取られた牧場で生まれて、それなりに育った後にあの場所へ移動されられたのかは私にもわかりません。

世界で唯一の「知りラクダ」として、あの海岸の草むらに機嫌よく立っている姿が、私の記憶の中のツガルさんです。

野毛山動物園でのツガルさん

野毛山動物園へ引き取られたツガルさんは、そこで大切に育てられました。持ち前の愛嬌の良さと優しさで来場者の人気を博し、2012年には「営業部長」を拝命しました。

私がツガルさんの居場所に気がついたのは、その「営業部長就任」「世界最高齢」というニュースでした。記事にサラッと書かれた「青森の観光牧場から来た」に気がついたのです。

1982年の来園から約30年。我ながら気づくのが遅い…! 遅いよ!!! だって地元ではどこへ行ったかはニュースにならなかったんだよ!

気がついたら居なかったんだもの!

時々思い出しては「いつの間にか居なくなっていたけど、幸せに暮らしているんだろうか」って考えていたのに、意外と近所で幸せに暮らしてたよ!(※就職で東京に転居した)

気づかなかった自分、ほんとに馬鹿ー!!

子宝には恵まれなかったけど、「ミチオさん」というオスの連れ合いがいたそうで、いろいろな意味でひとりではなかったし、幸せだったのだろうと思います。

2014年、惜しまれながら亡くなりましたが、そもそも人間でいえば120歳にもなる高齢。十分だったと思います。

以上が、私が知る限りのツガルさんの断片です。

野毛山動物園時代は知らない(気づいて会いに行った時はもうずっと寝てばっかりだった)のですが、それは野毛山動物園の人たちが形にするかもしれません。そういえば絵本になっていますね。

ツガルさん、長い間、本当にありがとうございました。

ツガルさん
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